千歳水族館でARを用いた実験を行う

研究室のS君による卒業研究です。

これまでにも過去3年,千歳水族館のご協力でiBeaconを用いた情報提示システムに関する研究を行ってきましたが,今年は思考を変えてARを用いた実験を行いました。

いくつかの仮説を元に行っている実験ですが,その一つは,これまで行ってきた携帯情報端末による情報提示に疑問を感じ始めていたからです。現在,千歳水族館ではアプリによる情報提示を行っています。

 

こうした端末を介する情報提示では,肝心の展示物と来館者の間を端末が遮ってしまいます。これでは,何を見に行ったのか,本末転倒です。この話は偶然にも,今年搭乗したANAの電子本だったCasa BRUTUS,No.209「動物園と水族館。」で葛西臨海水族園をデザインした,日本を代表する建築家である谷口吉生氏(ニューヨーク近代美術館新館など設計)が同じことを述べています。

本物の魚が目の前にいるのに,サインの写真と説明ばかりを読むことになる。そのまなざしを水槽に向け,本物の魚影の美しさにこそ感銘を受けてほしい

やはり同じことを考える人はいるのだなあ,と思った次第。

そこで,今回はARを使ってみました。曲がりなりにも端末を通して水槽をみることになるから。我々の調査では,苔の洞門通路を抜けて右手の支笏湖大水槽に向かう人たちは2/3に対し,主に子供連れの家族1/3が左側の体験ゾーンに向かうことがわかりました。この1/3を何とか支笏湖大水槽に足を運び,楽しんでもらいたいというのが我々の狙いです。以下の写真は苔の洞門通路から出てきた際の様子です。右手に支笏湖大水槽が,左手に体験ゾーンがあります。

また,水族館ではダイバーによる餌やりなどのイベントを行い,効果を上げています。

我々は,ARを用いて支笏湖の生態系に関するクイズ問題を用意しました。水槽内の石などを中心にARのマーカーとして,問題などが表示される仕組みです。水族館の館長のアドバイスや監修を受け,興味深い内容の問題が集まりました。また,カルデラ火山による支笏湖の成り立ちに関しては,アニメーションを盛り込むなどして楽しめる内容としました。

この連休中(2018.1.7, 8)に行った実験では,皆さん,結構時間をかけて,楽しみながら支笏湖の生態系に触れてくださいました。ご協力くださった来館者の皆様と千歳水族館の皆様に感謝いたします。

あとは, S君がアンケート調査などを元に,論文にまとめてくれることを期待しています(笑)。こうした取り組みが我々の大学の地元との橋渡しとなり,将来に繋がる成果をもたらしてくれるいことを期待しています。